「感情を揺さぶる写真を撮りなさい」
そう言ったのは吉野家さんの牛丼の写真を撮影した方でした。感情を揺さぶる?ってどういう意味かとお聞きしたら、カメラマンさんが「食べたくなる欲求が抑えられない写真を撮るということだよ」と教えてくれました。
確かに、店頭ポスターがヨダレ出るほど美味しそうな牛丼の写真だったら、店内へ引き込まれてしまいます。
「なるほど!フード写真なら、食べたい欲求をあげる=感情を揺さぶっていることになるのですね。」
写真だけではありません,キャッチコピーや、コピーライティングでも、美味しいと思わせる食材の選び方や、美味しいと言わせる、つまり感情を揺さぶる言葉があります。
学校で体系的に学んだ訳ではありませんが、仕事や毎日の暮らしの中で一番美味しいものを探し続けているので、目利きができるようになり、美味しい食材や、美味しく作れる調理機器、調理方法を料理人さんにお伝えする仕事をしています。そしてなぜそれが感情を揺さぶられるのか、という説明も加えてお伝えするようにしています。
特に、シェフというお仕事は、なかなか外出できないため、常に新しいものを探している彼らへ、私が出会う生産者さんの食材についてお伝えする事が増えました。
人の出会いって不思議です。親しいシェフから、こんな情報が欲しいと言われると、なぜか私の元に情報があったりするのです。ホテルへ供給できるかどうか、生産者さん側の状況を確認し、その美味しい食材とともに、効果的な調理方法、扱い方など、細かなアドバイスをお伝えします。その後、厨房で試作が繰り返されて新製品ができていきます。途中、シェフと生産者さんとのやりとりが増え、改善がくりかえされていきます。そして半年くらいたったある日、新製品としてお披露目。
素材から作られる過程を応援席から眺めることができ、レストランの過去最高の味に仕上がっていると、サッカー選手がゴールを決めたときのようにガッツポーズしたくなるほど、心踊る瞬間でした!
今日はそんな中から、最近の事例をご紹介したいと思います。
◇熊本県赤牛の贅沢バーガー(小田急ホテルセンチュリーサザンタワー「ラウンジサウスコート」)
老舗ホテルやハイアット系列で時々聞くお話です。
定番メニューはいつもと違う作り方で料理を作ると、馴染みのお客さまからクレームが来ることがあります。使う食材はその地域のものになりますが、系列ホテルであれば、同じ物が食べられるように、レシピは基本同じです。
この制限がある場合、シェフが可能なのは素材のレベルや、調理テクニックで美味しさを上げていく事。
型が決まっているものを美しく見せる技術は、料理だけではありませんが、究極まで美味しさを追求し、ジャパニーズホテルにしかできない、最高に贅沢なバーガーを作りたいというお話を聞いて、面白いなと思い、その挑戦お手伝いをすることにしました。バーガーの「パテ」は被災地熊本から赤牛を購入されていたので、私からは「バンズ」の北海道のシロクマベーカリーさんをご紹介しました。
シロクマベーカリー (札幌市、北海道産小麦パン)
http://www.shirokuma-bakery.com/
岡本料理長が作られた4月からの新商品は、国産食材の美味しさを追求したハンバーガーで、パン好き、肉好きに、是非ともお召し上がり頂きたいハンバーガーになりました。
北海道小麦粉のバンズは、噛んだときに柔らかすぎず、パテから染み込んだ肉汁を優しく受け止めてくれます。付け合わせのワサビマヨネーズとケチャップをのせ、香りが合わさると、食欲が暴走していく感覚!
材料費が高すぎて、本当なら4000円になるそうですが、支配人のお許しで、手が届く2900円に。パテは150gもあるので、2人でシェアしても十分なボリュームです。
北海道産小麦粉は江別製粉で製粉し、バンズはシロクマ北海食品でサイズ調整して丁寧に手作りをしています。熊本産赤牛はホテルだから実現できる一頭買いで、余計なものを混ぜずにそのままを味わうことができます。
レストランホームページ
https://www.southerntower.co.jp/restaurant_lounge/
写真はfacebookで紹介しています
https://www.facebook.com/ffcnippon/