2月25日(土)、埼玉県三芳町の三富今昔村・くぬぎの森交流プラザ(石坂産業)にて【発酵と土壌の国際フォーラムとグローバル交流会】が開催されました。
立教大学観光学部のインターン生、森谷さんのレポートです。
私たちが生きるために欠かせない存在としての「土」について学びを深めるため、"Living Soil, Living Food" というテーマで、イタリアなど海外の専門家も招き、国内外の研究者・生産者による学びの場が設けられました。
埼玉県・三芳町(みよしまち)では、日本農業遺産にも認定された「落ち葉堆肥農法」が江戸時代から続いています。かつて火山灰に覆われ農業には適さなかった武蔵野の地に、木々を植えて平地林を育て、その落ち葉を堆肥として畑に入れ、微生物が暮らしやすい豊かな環境がつくられました。
微生物が育んだ土壌の健康は、人間の健康でもあります。動物・土壌・環境・人間はすべてつながっており、人間が健康であるために土壌が健康でなければならない・・・基調講演で北里大学・陽捷行 名誉教授はおっしゃいました。この "Global Health" の考え方のもと、人間の健康を理解するためには土壌についての理解が必要であり、土壌への倫理が求められるというお話をしてくださいました。
木桶で仕込む、埼玉に生きる醤油
続いて基調講演として、弓削多醤油株式会社の弓削多洋一社長が登壇されました。
弓削多醤油の醤油は、たんぱく質が多く うまみ を強くする国産の丸大豆、高い香りを生み出す国産の小麦、天日塩を原材料につくられている生醤油です。加熱殺菌(火入れ)や精密ろ過をしていないため、酵母菌や乳酸菌が生きたまま商品になります。このような醤油は全国的にも珍しく、菌が生きているため保存は「要冷蔵」です。
生醤油は風味と旨味が強いのが特徴ですが、火入れをするとより香りが増します。製造の段階で火入れをしない生醤油に火入れをするタイミング・・・それは、お料理です。温かいお料理にかけることで香りが増すため、絶妙なタイミングで香りを楽しむことができるのが、生醤油の良さです。
弓削多醤油では、現在は全国的に希少となった木桶による醸造をしています。「中国では味噌になったものが、日本では醤油になる」と言われたほど日本の気候風土や原料、微生物は醤油づくりに適しています。
しかし、市販されている醤油の大半はタンク醸造によるもので、短期間での大量生産が可能ではあるものの、プラスチック製などのタンクには微生物が棲み着くことができません。一方木桶では、その地の気候風土にあった微生物が棲み着き、1年以上かけて醗酵・熟成させることで香りがよくコクのある醤油が出来上がります。
その地の気候風土にあった微生物が棲み着くということは、蔵によって味が異なる醤油ができるということです。そのため、今年創業100周年を迎える弓削多醤油が記念事業として製作している木桶には、地元・埼玉の原料(飯能の西川材、越生の真竹)が使われています。弓削多醤油の醤油は、埼玉の地に生き続けている醤油なのです。
"THIS IS EXCEPTIONAL!!"
後半はグローバル交流会。フードデザイナー・中山晴菜さんによるケータリングが振る舞われるとともに、埼玉県内の発酵食や発酵飲料を集めた発酵展示会が行われました。おつまみをつまみながらお酒を楽しむ「アペリティーボ」というスタイルで、生産者と交流しながら発酵食品に触れ、学びました。
申し遅れましたが、私はこの交流会での生産者の紹介資料作成からお手伝いさせていただき、当日は他のイベントで来られなかった山口農園さんと松岡醸造さんのブースを担当しました。
2万本もの梅が咲き誇る埼玉・越生(おごせ)町の山口農園さんからは、梅干しの他、梅を使った加工品を紹介。塩だけで漬け込んだ酸味の少ない梅干しは、「やさしい味」という声を多数いただきました。また、梅ジャムや万能梅みそは外国人の方に特に好評で、ある方は "THIS IS EXCEPTIONAL!!(格別だ!)" とたいへん喜んでおられました。
埼玉・小川町の松岡醸造(帝松)さんからは、「PREMIUM 純米吟醸生原酒」を紹介しました。これも大好評で、あっという間に売り切れ。フルーティーな味わいが特徴で(実際飲むとびっくりするくらいフルーティー!)、外国人の方から「このお酒にも梅が入っているの?」と言われるほどでした。
どちらも試食・試飲された方皆様に喜んでいただき、自分が作ったわけではないのに、自分のことのように嬉しい気持ちになりました。
「埼玉には何もない」とよく言われますが、よくそんなことが言えたものだと思います。思い・信念を持って素晴らしいものをつくっている生産者さんが、埼玉にはいらっしゃいます。
今回はグローバルなイベントでしたが、埼玉県民、そして日本人にも、埼玉のすばらしい生産者さん、商品のことを知ってほしいと思いました。
もう、「埼玉には何もない」なんて言わせません!
- 発酵と土壌の国際フォーラムとグローバル交流会 https://santome-community.com/living-soil_living-food_forum/
- くぬぎの森 交流プラザ https://santome-community.com/facility/plaza/
- 石坂産業株式会社(主催) https://ishizaka-group.co.jp/
- GEN 齋藤由佳子(プロデューサー)http://www.gen.education/
- 弓削多醤油株式会社 https://yugeta.com/
- 梅の里おごせ山口農園 https://www.yamaguchinouen.com/
- 松岡醸造株式会社 https://www.mikadomatsu.com/
- 漬物創作 河村屋 https://www.kawamuraya.co.jp/
- 五十嵐酒造 https://www.snw.co.jp/~iga_s/
- ヤマキ醸造 https://yamaki-co.com/
- 権田酒造 https://www.gondasyuzou.com/