フードビジネスは不思議な魅力があります。
ソフト、ハード、そしてヒューマン。総合力の試される仕事で、成功する方は人格者でもあり、人間味のある面白い方も多いと感じています。
そんな素敵な方々から、ビジネスのコツなど、サラッと聞けてしまうのが、私の特技。
今年も様々なフードビジネスの方々とお仕事をご一緒させていただき、懇親会やパーティーの席で、お酒や仲間の楽しい雰囲気の力を借りつつ、なかなかお話のできない雲の上の方のお話を聞かせていただきました。
「コラムに書きます!」とお伝えし許可を頂き、誰が言ったのかはわからない程度に固有名詞は変更しますので、誰だ?なんて詮索せずにフィクションだと思ってお読み頂けたら嬉しいです。
さて、第1回目のお話は有名ホテルの総料理長のお話です。
エピソード①
ホテルの料理長さんですら緊張されるような、とある1日をご一緒したとき
いつもは笑顔で話しかけてこられる総料理長さんが、朝から口数が少ないのです。ワタシが何を言っても、聞いていない?と思うような素振り。
何か私が悪い事をしてしまったのかしら…とビクビクしながらも、その日の大切なイベントは順調に進み、無事終了。
終了後の懇親会で、ようやくいつもの笑顔の戻った総料理長さんに朝のことをお伝えしたら、
「頭の中でリハーサルしてました。すべての場面をチェックして、ロールプレイをして」
あ・・・この雲の上の方レベルでも、当日の進行で行き当たりばったりは全く無いのです。
総料理長は一人3役。プロデューサーであり、現場監督であり、お客様をお出迎えするホストの代表でもあります。挨拶のセリフを覚え、お客様の名前を忘れないようにし、大事な場面での振る舞いと準備、自分の行動を確認。部下のポジション、役割も全てチェックし、指示を出します。
大切な1日を過ごすためには、朝の忙しい時間にもかかわらず、何度も頭の中でリハーサルしていたので、私の話はうわの空だったのです。
総料理長さん曰く、私は任せておいて大丈夫なんだとか。褒められているということで(苦笑)
確かに、自分自身が演奏会に出るためには、半年以上前から練習します。どこでお辞儀をして、どんな演奏をして、お客様への感謝の言葉も念入りに準備します。
それは仕事だったら当然の事。毎日のように繰り返される宴会や接待でも、料理を準備するだけではなく、どのタイミングで、お客様に声をかけるのか、その言葉を選び、パフォーマンスのリハーサルをしておくことが大切です。
自分にミスが無いと思っていても、従業員が数百人いるホテルであれば、誰か一人でもホテルブランドを傷付けるようなことをしたら、責任を問われます。
頂点に立つ総料理長は慎重派。絶対に失敗はしない、させない、努力の人でした。
その影のご努力に、ますます尊敬!喜んでついていく部下が多いのも納得でした。