東海道新幹線の米原駅から、JR北陸本線で約30分
小さな余呉駅に、日本全国から美食家たちが訪れる鮒寿司の名店「徳山鮓(とくやまずし)」があります。
ご縁というものは不思議なもので、滋賀県の仕事を引き受けて欲しいと紹介されたのは、東北出張中の1ヶ月前。
全く滋賀県と縁のない私は、知人友人を介して滋賀県について聞いたところ、東京在住で有名料理人は数少ないのですが、足しげく滋賀県に通っている美食家が多数いることを発見。他の日本各地にはない郷土料理と、琵琶湖に注ぐ美味しい「水」のおかげで、日本酒の宝庫であることが分かりました。
「一度は行ってみたいな…」と美食家さんに伝えたら、なんと日帰りランチで良ければ一人席が空いているから、一緒に行きましょうと言われ、急遽滋賀県へ、日帰り遠足の美食の旅へ行ってまいりました。
余呉駅に着くと、女将の純子さんが車でお迎えにきてくれました。
余呉湖を眺めながら、農村を快調に走る車。5分くらいで徳山鮓さんに到着です。
湖に面したテラスが広がる個室に案内されました。小雨で濡れたデッキテラス、その向こうには濃い緑色の山々と、黒く光る湖が広がり、景色の美しさに圧倒。すぐに、ご主人の徳山浩明さんがいらして、美食家さん達と楽しくお話がスタート。ここに来る人はお客さんでは無いのです。2年前でも友人として出迎えてくださる温かさがありました。
料理とのペアリングは「七本鎗」の3種類の日本酒。
鰻、琵琶鱒とフナの卵のこま鮓、スッポン。どれも、ご主人が足で集めた地元の食材を使っています。
特に見た目も豪華だったのが「鯖のなれ鮓」。トマトに飯を加えたソースと、岡山の吉田牧場のカチョカヴァッロを添えたソースで頂きます。中央にあるのはチーズ。日本酒によく合うこと!
「徳山鮓」さんの名物「フナのなれ鮓」は想像より薄い身が出てきました。写真のお料理です。
オレンジ色の卵が色鮮やかで、山椒、はちみつを使ったソースでいただきます。左にあるのは、薄いパンになれ鮓を挟んで軽く焼いたもので、こちらもおつまみの感覚で頂くのですが、今まで味わったことのない酸味と旨味が凝集していて、なんとも言えない贅沢な幸せを感じてしまうのでした。
すっぽんの雑炊を持ってきてくださった二代目の舞さんには、素敵な旦那さまがいらして、ご夫婦で挨拶に来てくださいました。厨房でずっと作られていたという若旦那さん。その若々しく、つるんとしたツヤ肌に、発酵食品は身体の中から美しさを作り出すことを実感してしまいました。
伝統芸術には、歌舞伎、古典落語のように、伝統的な美しさ、面白さがあるもの。創造芸術は、「なにこれ?」と思わせ、スタイリッシュで印象的なものがあります。
どちらにも良さがあるのだけれど、一緒に並べると、人は視覚的に創造芸術の方が魅力的に感じてしまうものです。
徳山鮓さんの鮒寿司は伝統芸術料理の分野ですが、視覚的にも、味覚的にも強烈なインパクトがある創造芸術の域に達しています。さらに、ご夫妻、ご家族の皆さんのお人柄が温かく、料理は日々進化しているそうで、美食家さん達が足繁く通ってしまう理由がよく分かりました。
本当に高いレベルの仕事ができていると圧倒的な存在になります。
自分たちの現状に満足せず、あたり前のことを徹底して積み重ねる。その姿勢と料理を堪能する事ができ、遠路3時間かけて滋賀まで行った甲斐がありました。
日本各地には素晴らしい郷土料理がありますが、徳山鮓さんと同じように、各地で頑張っている料理人さんやお店を訪ねてみたいと思うこの頃です。
どなたか見つけたら、ご連絡くださいね!そして、もし私も一緒に連れて行って頂けたら嬉しいです。
徳山鮓(とくやまずし)
http://www.zb.ztv.ne.jp/tokuyamazushi/
住所 滋賀県長浜市余呉町川並
TEL. 0749-86-4045
facebook「food field creative」に写真を掲載していますので、合わせてご覧ください。