皆さんの職場では食品衛生法の改正に伴う衛生管理の改善は進んでいますか?
昨年6月、食をとりまく環境変化、国際化等に対応しつつ、食品の安全を確保するため、食品衛生法が改正され、最重要項目にHACCPに準じた衛生管理の制度化が挙げられています。
食中毒は様々な原因から発生します。そこで、危害要因を分析して、除去・提言するための管理基準を定め、従業員教育を行う施設が増えています。また、商品を受け入れる検収時や、冷蔵庫保管温度、調理中の食材の温度を記録し、衛生管理を「見える化」することで、店側の衛生管理に問題が無いことを証明できるような体制を整えている施設が増えたと感じています。
しかし一方では、従業員に温度計測、記録などの負担が増えています。宿泊施設や飲食業は離職率が高く、慢性的な人手不足が続いているのにもかかわらず、さらなる負担は経営者にとって頭の痛いところ。そんな職場の悩みを解消できるシステムについて、先日下記の2社からお話を伺いました。
事故を未然に防ぐ方法として、冷蔵庫やスチームコンベクションといった大量調理の機器は、温度履歴をデータ管理することが求められており、それらのデータを一括管理できるHACCPマスターや、スマートバンドはとても便利です。
簡単にシステム概要をご説明します。
・厨房内の機器温度・状態・作業記録を一括管理
・冷蔵庫や冷凍庫の温度記録、状態もPC画面で一覧表示
・食材の入荷、料理の加熱温度を作業者記録とともに、データ保存
・日報・月報が自動作成。ペーパーレス化。
・機器の異常を知らせ、食中毒事故を未然に防止
・様々な管理システムと連携可能。食材発注と検収を連動させ、確認、報告の時間短縮に。
HACCPマスターを使われているパレスホテル東京にお聞きしたところ、冷蔵庫の扉が開けっ放しになっていると、異常な温度を検知して警告する機能があり、人のうっかりミスを防いでくれます。また、調理工程のデータ管理では、食材の中心温度のグラフを瞬時にエクセルシートにアウトプットできる機能が、美味しさを数値で標準化できる点や、食材納品時の温度計測も連動していて、キッチンスタッフの負担軽減と別館の購買管理課での業務も軽減できるそうです。
ただ、現時点ではかなりの高額商品です。それでも皆さん導入を検討されていますか?と突っ込んでお聞きしたところ、たとえこのシステムに1000万円かかったとしても、HACCP制度化により従業員の作業負担は増えていて、手作業での記録より、システムとして構築することで、管理者としても安心で、従業員の負担も削減でき良いとのこと。
ITシステムが得意な数字記録や管理は任せて、人は美味しい料理を作ることに専念する。確かに、この方法であれば、料理人さんが本来やりたい仕事に集中できますね。
私は給湯器や燃料電池の商品開発をしていたときに、リモコンで機器を制御する機能や、メンテナンス端末に機器情報を吸い上げて、機器内部の情報を確認できる技術を詳しく勉強したことがありました。一見簡単に思えるかもしれませんが、機器からの情報は部品それぞれが配線で繋がり、刻々と変化する機器内部の情報が基盤に集まります。そこからリモコン、さらにインターネットまで広がっている現在、様々な厨房機器の情報をどこまで吸い上げて、お客さまが使いやすい情報を取捨選択して提供するのかが課題となっています。近い将来、実現しようとしている未来の厨房像や、コストと技術のせめぎ合いを理解できるので、ついつい突っ込んだ話を2時間近くお聞きしてしまいましたが、安心・安全と美味しさの両立を目指して、厨房内を改革しようとしているメーカーさんのお話は、とても面白かったです。
まずは近い将来、厨房機器の稼働情報から、調理スタッフの勤怠管理まで、これらのシステムで一括して把握できるようになります。
外から持ち込まれるウィルスや菌を徹底的に排除する仕組みは、人任せになっているルールを機械で制御できるようにするもので、仕事の見える化は、古き良き時代のいい加減な仕事を排除する方向に動いています。
写真:福島工業のHACCPマスターが導入されているパレスホテル東京では、毎日20斤限定のプレミアム食パンが人気です。北海道の希少な春まき小麦「はるきらり」100%使ったふくよかな口当たりと国産蜂蜜の芳醇な香りをぜひお楽しみくださいね。