北海道小麦農家さんの夢が実現

北海道のファーム田中屋さんの小麦で作られたパンが、アラン・デュカス氏がプロデュースされた「エステール」のコース料理で提供されています。2月某日、田中さんご夫妻が東京へ来られて、初めてお料理を頂く機会にご一緒させていただきました。

「エステール」のコンセプトは“大地と海の出会いの物語を紡ぐ場所”

ロゴは、大地 (LA TERRE) ・海 (LA MER) に含まれる2つのRを重ね合わせた形です。白いお皿やカップにアクセントとして使われていて、雪だるまにも見えるキュートなロゴが印象的です。

アラン・デュカス氏はパリで日本人シェフ初のミシュラン３つ星に輝いた「Restaurant KEI」小林圭シェフの師匠としても有名です。2019年秋にオープンしたばかりのレストラン、フランス料理「エステール」は大手町のパレスホテル東京６階へ伺いました。

まずは真っ赤なデトックスドリンク。丸い氷にビーツの赤い色が鮮やかです。苦味のあるドリンクですが、野菜の味をしっかり感じることができて、とても美味しく、胃袋が刺激されていくのを感じました。

その後に続く、フィンガーフードの演出や、前菜のガラス製のお皿は気泡のデザインが魅力的で、目の前に広がる東京の夜景との調和が見事でした。

フランス料理のイメージは金銀のキラキラしたイメージを持たれる方が多いかもしれませんが、天然素材が多く使われていて、空間演出は居心地の良い落ち着きがあります。

楽しみにしていたパンは2種類、目の前でカッティングサービスがあり、バターナイフは木の丸みを帯びた可愛らしいデザインです。キャビアなど小さなお料理も食べやすいよう、変形スプーンが出てきたり、よく切れるナイフなどのカトラリーは使いやすく、洗練されたおもてなしの心を感じました。

今回は日本のテロワールを感じる数々のフランス料理フルコース「SIGNATURE」（シグネチャー）26,000円をいただきました。ドリンクは料理に合わせてソムリエさんにお任せで、二人はアルコール、一人はノンアルコールです。

ご一緒したのは美味しいものが大好きで、日本全国を食べたいものを求めて旅をしてしまう美食家のご夫妻。オーガニックの米、小麦、蕎麦を育て、自家用の野菜もつくらています。私も畑で野菜を育てていますので、採りたて野菜の美味しさをよくご存知のご夫妻とは話が合います。北海道から、エステールの料理を食べにわざわざいらっしゃったお二人が大満足のお料理ばかりでした。

　今回、日本人が慣れ親しんでいる国産食材をフランス人が料理にするということはどういうことなのか？という事を五感で感じることができました。普段私たち日本人が見落としがちなありふれた食材でも、フランス料理の技で考えると、なるほどと思う組み合わせで、新しい発見がありました。

　トラディショナルなフランス料理の技法を大切にしたお料理は、単純に美味しいというだけではありません。エステールのフランス料理は、どこにも無い独特な味わいで、食材の持つ弾力や色の美しさを残していました。例えば、牛肉はソテ（フライパンで表面を焼く）した後、真空調理で美味しそうな色になるように加温して肉汁を閉じ込めているそうです。温かいお皿の上で魅惑の香りを放っていて、一口食べると、酸味と旨みで容赦無く攻め立てます。見た目の美しさと、食感の満足度、香りのコラボレーションで、こんな強く印象に残る肉料理を食べたのは初めてでした。

フランス料理では、食材で余った部位は無駄にすることなくスープにします。2月だったので深みのあるお皿に盛り付けられ、頂く直前に温かいソースをたっぷりかけていただくと、ほっこりする美味しさ。味はフレンチ、でも食べ方は和食です。ひよこ豆のコンフィは「ひつまぶし」のような香りがしたり、青森産の本鮪は、アヴォカドと金柑がいいアクセントになっていて、テレビドラマ「グランメゾン東京」でキムタクが演じる主人公が作りたかったのは、こんな鮪料理だったのでは、と思わせる完成度の高い一品でした。