「ポケットマルシェ」や「かごんま食べる通信」で購入した野菜や加工品はとても美味しく、生産者さんのこともしっかり書かれているので、いつも楽しみにしています。
先日、このポケットマルシェ(通称ポケマル)や食べる通信の代表取締役社長 髙橋博之さんの講演会に参加しました。全国47都道府県を回っているキャラバンです。いいですよね。こうやって日本全国をまわって肌で感じたことを伝えていくお仕事のやり方、私は好きです。埼玉会場へ15人の参加者と一緒にリアルでお話を伺いました。
ポケマルは4年目で、生産者さん目線で、消費者をつなぐオンラインビジネスを実践。コロナでユーザー数を一気に増やしています。また、5/22からテレビCMを行い認知度が上がりました。ユーザー数は20万人を超えています。
生産者の「想い」とあなたの「おいしい!」をつなぎたい
私の周りでも使っている人が多くて、美味しいものの情報交換を楽しんでいるのですが、生産者さん側の話を聞いていると、コロナで初めてのオンラインショップにチャレンジしたものの、お客さまと直接のやりとりに慣れていないので、手間がかかる割には売り上げが少ないとか、お客さまとの直接のやりとりが大変といった声が上がっているのです。
テレビCMを見てオンラインで購入をしはじめた消費者は、ポケットマルシェの生産者を一般的なオンラインショップ店員と同じように扱ってしまうのですが、彼らは太陽の下で農作業をしている生産者です。
「問い合わせの返事が遅い」「発注をキャンセルして欲しい」「数を変更して欲しい」「商品が届くのが遅い」など、様々な要望、クレームを直接生産者に時間問わず、投げかけてきます。
しかし、生産者はwi-fiがつながらないような畑にいるので、物理的にムリなのです。
私は浦和の自宅から、早朝や日が暮れた後、自宅に帰ってきた農家さんとメッセンジャーなどで話を聞いていて
これは何とかならないのか。。。とずっと考えていました。
そこで今回、直接高橋社長にお会いできる機会でしたので、質問を投げかけてみました。
最近のポケマルは、ユーザーが増えたことで意外と簡単に売れてしまうので、月々数万円の売り上げは確保できます。うまく軌道に乗せられれば良いのですが、手間と問い合わせの多さを天秤にかけると、正直どのくらいの生産者がこのシステムを使い続けられるのか?少し心配をしています。
やはり「作る」と「売る」はスキルが違います。
生産者の中でも、スーパーマンが増えてきて、両方ができる人がいますが、生産者さんの輪の中に入ると、作る専門の人が多い世界だと感じています。
だから髙橋社長にお尋ねしたのです
「ポケマルは生産者が一人で販売するシステムになっていますが、他の人が手伝えるようにならないでしょうか?」
この質問の背景を説明すると、
ポケットマルシェの本来のターゲット(生産者)は、スーパーや、オイシックスのような大規模のビジネスに対応できない、小さな生産者をターゲットとしているのですが、実は生産者の多くを占める年収600万円以下の個人事業主では、生産と販売の両方の仕事をする事が時間的、体力的にも難しいのが現実です。
「生産者」にも様々な規模があります。外食産業が個人店、地域チェーン店、大規模チェーン店と規模の違う事業があり、それぞれビジネスモデルが全く異なるように、生産者も規模によって売り先が異なり、ビジネスモデルに違いがあります。
一見、ポケマルの画面で見ていると、小規模生産者が作って販売しているように見えるかもしれませんが、成功している生産者は、十数人で経営している農業組合や漁業組合など、ある程度規模があり、既にAmazonや楽天でオンラインショップを持っているところが多いように感じます。例えば、パソコンの前で一日中対応できるようなスタッフを雇って、ポケマルで販売をしているのです。もしくは社長がポケマルで対応して、パートさんが収穫などの農作業をしているのです。
質問をして良かったことは、
ポケマルは少しずつ変わろうとしていて、キュレーターさんを立てて、その人がオススメという生産者を紹介するシステムを作ろうとしているとのこと。オンライン上の八百屋さんです。
また、オンラインだけではなく、地域の飲食店さんなどがそのキュレーター役を担い、自分が使っている野菜などを紹介する仕組みで、野菜を売ろうとしています。
都内の外食店で売り上げが落ちてきていた店が、八百屋を併設したら集客にもつながったという記事を目にしましたが、まさにこのビジネス。小規模事業者同士、個人飲食店とポケマル生産者が手を組んで、野菜などの農産物を売ったり、料理を提供したりする事で、お互いに成功のチャンスが広がっていきそうです。
売られている食材には生産者の魅力的なストーリーがあります。
オフィス近くにある行きつけの飲食店でランチを食べて、ついでに夕食用に野菜や肉を買う。作り方も習えるので、つい買いすぎてしまう人が続出かもしれません。
そして、ポケマルは個性豊かな生産者とオンラインで簡単に連絡が取れるようになりました。シェフは自ら美味しいものを探し、料理にして人に勧める達人ですから、きっと3000人の生産者の中から、自分のお気に入り生産者を見つけて、ファンになり、周りの人に勧めてくれるでしょう。
スーパーや、オイシックスの規模まで到達できない小規模の生産者さんは地域密着型レストランやゴーストレストランは、ちょうど良いパートナーになりそうです。少量しか生産できなくて、貴重でおいしいもの、それは大きなお店にはありません。スモールビジネスのネットワークの中にあるのです。スモールビジネスの生産者と飲食店がタッグを組めば、他にはない美味しいものが提供できる魅力的なお店ができます。
また、最近は外食回数が減った事で、1回にかける外食の金額が上がっているという報告を聞きました。
美味しい食べ物をきちんと対価をいただいて、消費する流れを作ることは大事なことです。今までの日本の外食は安すぎます。
コロナで様々な計画が崩れた今、必要な対価を得て、環境負荷が少なく、全ての関係者がハッピーになる外食ビジネスモデルの新たな形が出来つつあると感じています。
もちろんこのスモールビジネスが成功できるのは、オンライン決済、物流、ネットショップの普及であり、これに追従できないオールド人材や、オールドビジネスは、徐々に淘汰されるのではと危惧しています。
新しいビジネスモデルへの転換をお手伝いしている中で、
生き残るのは時代の変化に合わせて、柔軟に対応できる人です。
ついていくか、ここで諦めるか、
9月以降、面白い時代になってくると感じています。
2020年秋、食の世界の新たなスモールビジネスが各地で始まりそうです!