ちょうど一年前、キムタク主演のテレビドラマ「グランメゾン東京」でフレンチの奥深さや、究極の美味しさを追求する料理人の努力を知り、フランス料理に興味を持ってくださる方が増えました。
でも、「フレンチを食べに行きましょう」と誘われたら、あなたはどう感じますか?緊張する、マナーがよく分からない、ボリュームが多い、窮屈だなどと思うかもしれません。そこで、少しでも多くの方にフランス料理に親しんで頂けるように、雰囲気や料理、料理人の意図を時々ご紹介しています。
今回は、竹芝に今年オープンした「mesm東京」シェフズシアターです。隈元シェフがプロデュースしているコース料理は、都内ホテル総料理長の集まる場で話題に上がるほどになってきました。寒くなると恋しくなるジビエ「蝦夷鹿」を食べるなら、ここは間違いないレストランの一つです。
先日の週末ランチの時間。何度来ても素晴らしい景色、大きな窓からはスカイツリーやベイエリア、浜離宮の景色が楽しめるだけではなく、個性的なデザインの空間演出が楽しいホテルです。カジュアルなデザインなので、浜松町、汐留界隈にお住まいと思われるセレブ家族連れで満席でした。
アミューズは溶岩石のような黒い台の上でインスタ映えする美しさ。手で食べる小さな4品。洋梨とシェーブルチーズ、イカ墨のお煎餅とエスカルゴ、砂肝コンフィとレンズ豆、フォアグラのテリーヌとイチヂクのコンポートでした。ヤギのチーズ、チェーブルチーズはフルーツと合わせるのがと本当に美味しいのですが、人肌程度の温かさがあり、口に含んだ瞬間に香りが口の中に広がりました。温度を考えて料理が作られています。
パンは、南部鉄器の器のまま焼いたカンパーニュです。フレッシュなオリーブオイルを付けると、モチっとした食感とパリパリの皮が絶妙でした。
菊芋を使った濃厚なスープは、帆立貝と合わせています。菊芋は英語名でイスラエル・アーティチョークと言います。アーティチョークや菊芋は魚介類の中でも、帆立貝やアサリとの相性抜群です。ヨーロッパ野菜研究会でもアーティチョークを育てていますが、今年の夏は売り先が見つからず生産者さんが大変でした。フランス人が大好きなアーティチョークと菊芋は日本でも収穫されていますので、多くの料理人さんに鮮度が良く香りがいい国産をお試し頂きたいです。
メインディッシュ「蝦夷鹿」付け合わせは根チコリ、黒胡椒。鹿は苦手な方も多いと思いますが、ビーフに変更する人は少ないそうです。香りのある蝦夷鹿とビーツのソースは相性が抜群で、添えてある根チコリも香りがある食材。この「香り」対「香り」の組み合わせは隈元シェフの得意とするところで、ムラの無い完璧な火入れも、ぜひチェックしてください。
デザートは、クリーム色のぷよぷよしたボールにナイフを入れると、香りいっぱいのソースが流れてきました。サクッと軽い食感のケーキと濃厚ソースがおいしいだけではなく、動画を撮りたくなる仕掛けです。
小菓子の焼きたてカヌレは外側がカリッカリで、中はしっとりクリームみたいな食感。猿田彦コーヒーのオリジナルブレンドは苦味が強く、酸味は控えめ。フレンチの食後にふさわしい味でした。
ランチコースは、ワインは料理に合わせて3杯頂き、消費税、サービス料も入れると、一人12,000円くらいでした。満足感があります!
特別にご案内いただいた「mesm東京」宿泊者専用クラブラウンジには、バルコニーテラスがあり、レストランフロアより高い位置で、海の景色を楽しむことができました。一度は泊まってみたい!慣れ親しんだ東京が、もっと美しく見える、そんな素敵なホテルでした。
フランス料理のレストランは総合芸術です。伝統の食文化があるからこそ、器、お店の内装、サーヴィスまで、見所は多岐に渡ります。
遊び心や、新しい解釈を楽しむならメズム東京は必見です!