あと3ヶ月、HACCP(ハサップ)完全制度化の準備はできていますか?
2018年6月に可決した「食品衛生法」改正によって、2020年6月から食品を扱う全事業者に対し、HACCPに基づく衛生管理基準の導入が義務化されました。
2020年の法律施行から1年間は猶予期間でしたが、2021年6月から完全制度化となります。
厚生労働省 食品衛生法の改正について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000197196.html
HACCPの考え方を取り入れた衛生管理とは、食中毒予防の三原則(有害な微生物をつけない・増やさない・やっつける)を基本に、今取り組んでいる衛生管理とメニューに応じた注意点をあらかじめ衛生管理計画として明確にし、実施、記録する一連の作業のこと。これまでと全く異なる対応ではなく、計画や記録により、衛生管理を「見える化」することです。
ホテル、レストランなど食品を扱う事業者自らが食中毒菌汚染や異物混入等の危害要因(ハザード)を把握した上で、原材料の受け入れから、最終製品までの各工程で、それらの危害要因を除去又は低減させるために特に重要な工程(CCP)を管理し、製品の安全性を確保しようする衛生管理の手法です。
この手法は国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)の合同機関である食品規格 (Codex) 委員会から発表され、各国にその採用を推奨している国際的に認められたものです。
HACCPには準拠すべき様々なガイドラインが示されていますが、その一つが食品の適切な温度管理です。例えは、飲食店の厨房内にある冷蔵庫、冷凍庫の温度、調理行程中の食品の中心温度など管理をします。
2021年6月からは、この温度を記録・保管する必要があるほか、適正に管理されているかをモニタリングする方法を設定しなければなりません。
私は2011年から元京王プラザホテル井部修さんが主催されている、「ホテル・ホスピタリティビジネス衛生管理実践研究会」に参加し、年数回、現場で日々悩まれている衛生管理マネージャー約40社と研究会を開催し、議論をしています。
毎回、調理場の管理者である参加者から悩みが聞こえてきます。
「コックコートを来ている人に、調理とはかけ離れた冷蔵庫などの温度記入をさせている。」「記録作業が面倒で嫌がる」「手書きなので、温度を正確に記録していない可能性がある」「決められた時間に記録しなければならず、仕事への集中力やモチベーションを下げている」
そこで、この作業をI Tで解決できないか?模索する動きが広がっています。
しかし、課題もありました。
・管理したい厨房に、複数のメーカー設備があると、一つの管理システムで温度を見ることができない
・温度データを出力できない機器がある
・取り組みたいが、費用がかかるので上司(支配人など)が理解してくれない。
これら課題を解決するため企業間のコラボレーションで開発スピード加速させ、厨房業界として「Internet of Kitchenプラットフォーム」が完成したことについて、厨房設備機器展でプレゼンがありました。
厨房機器メーカー10 社とシステム事業者で構成されるワーキンググループの取り組みで、エレクトロヒートセンターがまとめていて、フクシマガリレイ北川氏や、コメットカトウ吉岡氏等が登壇していました。
電化厨房ドットコム(エレクトロヒートセンター)
https://denkachubo.com/platform/index.html
「Internet of Kitchenプラットフォーム」は複数のメーカーが混在する厨房機器データを一元管理することができます。HACCPと厨房から始まる食品産業のDXです。
データの発信は厨房機器で、集中管理装置に入れてから、クラウド上にデータを集約し、管理を行うことで、厨房施設を使用するお客さまや管理者がいつでもどこでもデータを活用できるようになったのです。個人情報は持たず、メーカー名、機種名(型式番号)、製造番号で管理された情報を閲覧することができます。
「Internet of Kitchenプラットフォーム」で実現できること
- 温度データが見える
- 機器からの警告が見える
- お客さまの日々の業務を改善できる
メリット
①HACCP制度化に必要なデータがクラウドアクセスで閲覧できる
食材の保存温度や調理加熱温度・時間など調理過程において管理が必要なデータはさまざまな部署・担当者で見ることができ、管理が容易になる。
②警備、メンテナンスなどのデータ連携が簡単に
厨房機器の使用電気量や、機器から発信される異常情報など稼働状態を示すデータ等が分かるので、突然の機器故障による作業負担を減らすことができる。
③発注データ、POSシステムとの連携。発注・在庫管理の手間を減らす。
料理ごとに異なるレシピの発注状況・食材保管量など調理補助を行うデータが得られ、食材発注・在庫管理時間を削減できる。
参加しているメーカーは
厨房機器メーカー10 社やシステム事業者で構成するワーキンググループ
株式会社アイホー、エレクター株式会社、株式会社コメットカトウ、タニコー株式会社、 株式会社、中西製作所、ニチワ電機株式会社、日本調理機株式会社、フクシマガリレイ株式会社、 ホシザキ株式会社、株式会社マルゼン、一般社団法人日本厨房工業会、一般社団法人日本 ガス協会、一般社団法人オープン・フードサービス・システム・コンソーシアム、ウイン グアーク 1st 株式会社
ここで、一つお伝えしなければならないのは、スチコンの大手メーカー「RATIONAL」「UNOX」はドイツ・イタリア等の外資系のため、このプラットフォームには入っていないということ。しかし、機器からの温度管理情報は取り出せますので、ご安心ください。
外資系と国産両方の厨房機器がある場合どうするのか?
都内某Pホテルの事例でご紹介しましょう。
Pホテルでは、HACCPの温度管理を食材の仕入れから、提供、作業者の体調管理も含めて、クラウドで調理部、購買部、人事部、システム管理部などが同じ画面を見て確認作業を行いたいと考えています。
まず厨房機器からのデータは、複数の機器メーカーが混在しても管理できるフクシマガリレイHACCPマスターを使っています。ホテル社内システムとの連携には、別途費用がかかりますが、専門の技術者(今回はホテルのシステム担当者とフクシマガリレイのシステム技術者)にお願いして連携方法を検討。技術的には難しいことではないのですが、関係者が多くコロナ禍でZOOM会議をしながら、慎重に開発を進めています。
2021年6月までにこのシステムが整えば、食材搬入から冷蔵・冷凍庫保管、調理、提供までの流れで、温度管理ができ、万が一食中毒が発生した際の履歴を追うことができるようになります。また、調理の労務管理にも使いたい人事部へデーターを閲覧できる権限をお渡しする予定です。衛生管理は記録の信頼性が上がるだけではなく、調理人の生産効率やモチベーションも上がるでしょう。
都内プリンスホテルでは、タイムマシーン社の温度管理システム「ACALA」を使用しています。
タイムマシーン株式会社「ACALA」
クラウド型の温度管理システムで、設置された機器、計測データ、そしてクラウドアプリケーションが連携したトータルサービスです。ACALAは薬局が保有する薬剤ストックの温度管理を目的に開発されたシステムですが、今日では医療バイオ分野のみならず、食品関連の工場・倉庫・厨房・店舗・物流および農業分野などで多くのお客様に温度管理システムとして採用されています。
The Okura Tokyoはフジマック厨房管理システム「キッチンリンク」を使用し、従業員の入社時体温チェックから、各室の温度・湿度、機器の温度管理、食材の入荷から提供までの温度管理、データの自動記録。厨房環境をパソコンで一元管理しています。
フジマック厨房管理システム「キッチンリンク」
https://www.fujimak.co.jp/products/products/cat189/000472.html
また、メズム東京は冷蔵庫に後付け設置できる「CHINO」社製温度計を使い、ほぼ自作でクラウド管理システムを作っています。このホテル担当者のITスキルが高いからできることですが、温度管理だけなら、ローコストでシステムを作り、クラウド画面で24時間、365日管理も可能です。
HACCP制度化に向けて、ラストスパートですね。
皆さん、一緒にがんばりましょう!