元京王プラザホテルの井部さんが幹事をされている「アスコット会」秋のフランス料理フルコースです。
コロナ禍ではありますが、感染対策を徹底しつつ皆さまとご一緒させていただきました。今回も、ホテルオークラ4代目総料理長として40年務めた根岸規雄さんが参加されていて、スタート時には藤崎斉総支配人がご挨拶にいらっしゃいました。
さて、今回のメニューの解説です。
石原雅弘総料理長、鈴木利幸シェフソムリエ、購買グループ支配人鶴さんの解説をまとめてみました。
<Menu>
富山湾より白海老のライム風味
→1皿目はワクワクしてレストランに来るお客様の期待を裏切らない、小さなかわいいケーキのような盛り付け。傷みが早いことから産地以外には出回りにくい白エビのねっとりとした食感が素晴らしく、富山を旅しているような気分になりました。白エビの上下に添えられたラディッシュ・カブ・カブの葉、花穂紫蘇のピンク色のアクセントが可愛らしい前菜でした!
ホテルメイド・各種ジビエのテリーヌ プチサラダ添え
→丹波産の子猪、鴨、ホロホロ鶏、フォアグラを合わせて、テリーヌに。信州高原野菜を添えています。
テリーヌの外側は普通、豚の背脂で巻きますが、なんと湯葉!
ヘルシーな和食材で、フランス料理コース料理を食べても胃もたれしないように作られています。
赤ポルト酒とビジョンマスタード、黒イチヂク(南房総市)のコンポートを煮詰めたコンディメントも美味しくいただきました。ジビエによく合います。
国産松茸風味のダブルコンソメスープ<秋の装い>
→信州の松茸、土佐赤牛のカイノミが入っていました。
ダブルコンソメとは、ふつうのコンソメをベースに、さらに肉を入れて煮出した濃厚なスープです。
具として入っている和牛のカイノミは柔らかく、旨みが凝縮していて、松茸と土佐赤牛なんて贅沢な組み合わせ。銀杏も入っていていいアクセントに。
高知県縮毛より伊勢海老の網焼 きのこ入りヴィネグレットソース
→伊勢海老は食べやすく、むき身になっていて、海老味噌と合わさっています。
信州のキノコとエシャレット、レモンの皮を合わせてヴィネグレットソースに。
秋の香りの中に爽やかさを感じました。
丹波産本州鹿のポワレ 瀬戸内海播磨灘産牡蠣のムニエル
カシス風味のポワヴラードソース
→丹波産本州鹿は無塩せきのベーコンを巻き、2日間、赤ワインや香味野菜をマリネしたもので漬けた後、強火で焼き上げて、牡蠣のムニエルを1つ添えています。ソースはカシス風味のポワヴラードソース(黒胡椒の効いたソース)
この料理のポイントは「牡蠣」を日本ホテルで提供するということです。
通常は衛生管理上NGなのですが、仕入れルートで衛生管理上問題が無いことを確認し、上司の許可を得て提供されたそうです。加熱調理で75℃、1分の火入れをしても香りが飛ばないように、ふっくらと焼き上げジビエの上に添えていました。肉の香り、ソースにも負けてない火の入った牡蠣。これはお見事でした!
上に添えられていたのは旬の里芋を棒状に焼き上げたものです。ねっとりした食感がとてもおいしかったです。
タルトタタン ヴァニラアイスクリーム添え
→一人前ずつ焼き上げたリンゴのコンポート。サクサクのパイとバニラアイスクリームとの相性は抜群。
コーヒーと小菓子
<Vins>
パゴス デル ガリア コデーリョ2021
スペイン北西部ガリシア原産の高級品種ゴデーリョのフルーティーな白ワインです。
なかなか東京のホテルでは出回っていないもので、
独特の果実味があり、最初は冷えているので酸が立ちます。
ぬるくなると、非常にいい香りが出てくる面白い白ワインでした。
https://www.mikuniwine.co.jp/?pid=134855820
エリクシール 2018
南フランスのラングドックのワイン。年間3000本しか作っていない生産者。
葡萄品種 : シラー80%、グルナッシュ20%
30年くらい前に流行った凝縮感の強い赤ワイン。
ジビエと黒胡椒に合わせるには、間違いなくコレ!
https://item.rakuten.co.jp/sakeishikawa/4514852550010/
今年も先月、Hilton F&Bマスターズで審査員をさせて頂きましたが、ホテルの宴会料理は参加者(今回は約40人)全員に美味しいって言わせて、完食してもらえるのがベスト。
ここが街の飲食店とは大きく異なるところで、仕入れから調理、提供までのテクニックが異なります。
客席に運ばれるまでの工程数や、盛り付け、無理が無いようなメニュー構成ができているのか、美しさも必要ですが、熱いものが熱く、冷たいものは冷たく、盛り付けのタイミングも間に合うのか、ついつい気になってしまいます。
フランス料理人が数多くいるアスコット会は、ブランルージュで開催することが多いのですが、石原雅弘総料理長はフランス料理の古典を現代の感覚にアレンジし、前菜から、魚料理、肉料理と違和感なく、テンポよく、味のバランスが良く、流れるような音楽を聴いているかのように飽きさせずデザートまで、時間が過ぎていきました。
参加者の健康志向への高まりや、地産地消、エシカルなどの要望に合わせて食材を変えたり、ボリュームをコントロールされています。さらにSDGsフードロス問題に配慮して、パンは食べ切りサイズで半分にして、お皿に盛られています。パン皿を出さなければ、食器の洗う手間も少なくなります。日本ホテルグループ全体でも、宴会料理でパンのフードロスは1/3になったそうです。
肉料理の火入れは完璧、ソースも抜群に美味しく、料理に合わせたパンの味、硬さも考えられていて、相性も抜群です。パンでソースを綺麗に頂きました。
エビなどは食べやすく殻を剥いてありましたし、付け合わせには野菜やキノコ、秋のフルーツがふんだんに使われていて、20年前?のようなフランス料理の重たさはありません。
食材を選び、調理をして、サーヴィスをする。それぞれのプロフェッショナルの技にミスが起きないようなチームを作らていることが、毎回アスコット会で出される料理のレベルの高さから感じます。
食後の珈琲も以前より美味しくなったように思います、フィルターで落とした上質な香りがしました。
まだまだ感染対策は必要ですが、ホテルにコロナ前の活気が戻りつつあることを感じたアスコット会でした。とても勉強になりました!関係者の皆さまに御礼申し上げます。