総料理長の食事会「アスコット会」2023年1月レポートです。
東京駅丸の内駅舎にある東京ステーションホテルの、メインダイニングのレストラン〈ブラン ルージュ〉にて、皆様と楽しませて頂きました。
「美食ってなんだろう?」
席でご一緒した4人でそんなお話をしました。
清水さんのお知り合いで、数多あるミシュランの星付き店に行ったことを写真撮影して自慢するために食べ歩いている人がいるそうなのですが、あまり気持ちの良いものではありません。
素敵な仲間と、腕のいい料理人、サーヴィス、ソムリエがいて、白いテーブルクロスに美しいお皿とナイフ、フォーク、曇りのないワイングラス。窓辺にはお花が活けてあり、産地からこだわって食材を仕入れ、手の込んだ美味しい料理が並んでいる。
こんなお店には、星が無くても、何度でも足を運びたいと思います。
先日、某都内ホテルの総料理長にフランス料理はなぜ革新的なことをしないのか?と質問をしたら、フランス料理の食文化は伝統と格式を大切にしているから、それは難しいと言われました。
人は仕事や暮らしの中で、様々な人と集い、お祝いをするときにフランス料理を食べる社会的習慣があります。フランス料理は、ただ美味しいものを食べるだけの目的では無いのです。そこに集う親しい人がいて会話があり、食文化を楽しむ場でもあるのです。
一方、対照的なのは「noma」など、The World's Best 50 Restaurantsにランキングされるレストランです。食文化が乏しいと言われていたデンマークに、サスティナブルな考え方に基づき、様々な地域の食文化を混ぜながら、革新的な料理を作り、美味しいと評判です。ランキング上位に上がるためには、時代の空気感を感じながら、革新的なことにチャレンジをしなければなりません。
時代がどんなに革新的な料理を求めていても、フランス料理はコースの順番や、食材の選び方にルールがあり、それを逸脱することはできません。時々、古臭い料理と言われてしまうこともあります。
でも、それは年代や性別、出身地など異なる人々が共に食事をするときに、皆が笑顔になれるような食事を目指しているからだと、最近気付くことが多くなりました。
フランス料理は、老若男女、万国皆が大好きな料理で晩餐会として提供されていて、人々が共に食事をすることで、お互いに理解し合い、親近感、信頼感が高まる料理です。
2010年ユネスコの「食の世界遺産(無形文化遺産)」として「フランスのガストロノミー(美食術)」が登録されていて、その中にも記載されているように、
美味しいものを人々が共に食事をすること、土地の恵みとの調和、料理とワインの組み合わせ、テーブルセッティグ、マナーなどを含めたガストロノミー文化は、ミシュランの星とは別の次元でとても大切で、これからも次世代に継承していく必要があると考えています。
前置きが長くなりましたが、総料理長たちが一般の方も招いて、フランス料理の魅力を継承し続けている食事会「アスコット会」2023年1月石原雅弘総料理長のフルコースの料理、ワインをご紹介します。
アミューズ キャヴィア 毛蟹 カリフラワー
贅沢にキャヴィア、北海道の毛蟹、そして季節のカリフラワームースです。
手前は、青森県の蕎麦粉を使ったガレットをハムやチーズと一緒にカジュアルに
フレッシュなトリュフを添えたガレットは口いっぱいに香りが広がりました!ワインとの相性抜群です。
三崎直送 天然真鯛の瞬間スモーク フヌイユと蕪のサラダ
天然真鯛や野菜のマリネを瞬間スモークに
かぶとフユイヌの細切りをサラダにして、カブのピクルスや、カブのピューレを合わせたクーリー(重ためのドレッシング)もスモークの香りがありました。
国産伊勢海老のビスク<カプチーノ>
伊勢海老の頭を潰してビスクにして、カプチーノ仕立てに。濃厚なスープは王道の美味しさです!
高知県宿毛直送 羽太のグリエ
オーガニック赤米 黒米 地蛤入りソースピストゥー
網焼きのハタはふっくらと香ばしく、
地蛤をワイン蒸しにして、ベースにしてソースピストゥーに。
南仏のソース、バジル、松の実のペーストが入ったスープ仕立てで
オーガニック赤米、黒米を入れて雑炊のような味のするソースは春を感じさせる綺麗な緑色のソースでした。
ビュルゴー家のシャラン鴨のロティ ソーススヴァロフ
各種冬野菜のグラチネ添え
輸入はウクライナ情勢で厳しく、昨年から頼んでいたビュルゴー家のシャラン鴨が奇跡的に10羽届いて、そのうちの7羽を使い本日のメニューに!
なんて貴重なんでしょう!
シャラン鴨(canard challandais)とは、
生産量が少なく、フランスでも一部のレストランにしか出ていない貴重な食材です。フランス・ビュルゴー家のシャラン鴨は4世代に渡り、ルーアン鴨の血を引くシャラン鴨の飼育とその商品を受け継いでいます。恵まれたシャランの環境の中で、その伝統ある飼育方法を頑固なまでに守り続けているそうです。限定されたシャラン地域にのみ生息していた鴨を家禽化した純血種で、シャラン全域で飼育されているいわゆる 「シャラン産の鴨(canard de challans)」 とは全く異なる、確立した品種です。ビュルゴー家のシャラン鴨だけに許可された、血液を体内に残したまま屠殺される窒息鴨(カナール・エトゥフェ)は、他に比べ、柔らかく濃い赤身が特長です。
フォンドヴォーとブランデーを加え、フォアグラ、トリュフの香り豊かで濃厚なソースは、鴨の旨みに感動的な華やかさが加わります。
付け合わせは、里芋、菊芋、ハスでベシャメルを作って、トリュフの香りをつけてグラタンに。可愛らしい正方形で、彩りの美しい付け合わせでした。スティックセニョール(ブロッコリーニ)は茎が長く、お皿にインパクトが出ますね。
柑橘のジュレとショコラのムースリーヌ
スペシャルデザートはお祝いのベリーケーキ
コーヒーと小菓子
Vins
ステーションホテル シェフソムリエ 鈴木利幸氏さんの解説です。一流のソムリエが解説すると、ワインがさらに美味しく感じます。お料理との合わせ方もプロならでは。家で飲むより数倍美味しいと思うので、レストランへまた行こうと思ってしまいます。
プティ・マンサン2020
栃木県足利市 ココ・ファーム・ワイナリー
プティ・マンサンはフランス南西部、ピレネー山脈の麓で栽培されてきた品種です。日本の風土にも合い、2011年から毎年ココ・ファームでワインが造られています。「2020プティ・マンサン」は酒石酸が入っていて、少しガスを感じ、はちみつの風味もある変わった白ワインです。
https://cocowineshop.com/SHOP/ABB-3607.html
マコン ヴィラージュ2020
パリ農業コンクール2年連続金賞受賞!
フランス ブルゴーニュのシャルドネ100%
1つ目と全く違い、全く違う作り方、安物のイメージがありますが、これ以上美味しいものはないのではと言うものに出会ったので今日のワインに選んだそうです。
熟したメロンや洋梨のニュアンス、穏やかな酸味と果実の厚みが魅力の白で少し温度は高めの方が香りが立ちます。
https://www.miraido-onlineshop.com/item/1-cd-lugny-macon-os/
シャトーシャペル ダリエノール2017
昔の王道に沿って、鴨に合うワイン。
サンテミリオン1級のシャトー・ラ・ガフリエールを所有する名門マレ・ロックフォール家のボルドー・シュペリウール。
メルロー8割、カベルネ ソーヴィニヨン
かなりしっかりとしたワイン
お値段は高価なものではありませんが、口に含むと肉感的で濃厚、熟成感があります。繊細なタンニン。余韻は長く、フレッシュさが感じられます。
https://www.yodobashi.com/product/100000001006297099/
トリュフについて
お隣に座っていた吉川さんが、先日蔵王のペンションで蔵王産の天然トリュフを食べたと言うので、話が盛り上がりました。
「トリュフ」とは、フォアグラ、キャビアと並ぶ、世界三大珍味として知られるキノコ。和名は「西洋松露(せいようしょうろ)」です。
トリュフは、石灰岩質の土に生えているカシやナラなどの広葉樹の根に共生して増殖し、外観は、球状や塊状です。地面の上にではなく土の中に生えてるため、見つけるのが難しく欧州の産地では、犬を使ってトリュフ狩りが行なわれています。
日本でも各地で見つかっているそうですが、蔵王では人が臭いを嗅いで、土を掘って見つけているそうです。
朝食にトリュフリゾットが食べられるという蔵王のペンション、検索で見つけました。
ペンションスイス