ホテル業界から食品事故をなくし、食の安心安全に貢献するため2011年2月に設立した研究会で年3回の開催。10年目を迎えた先日、第29回目の研究会が開催されました。私は2011年のスタート年から継続して参加し、皆様と一緒に衛生管理の課題解決を学んでいます。
今年6月は、HACCP制度化、食品リコール情報報告制度が盛り込まれた「食品衛生法」一部改正がスタートします。ホテルの衛生管理マネージャーには専門知識を持って広域での情報を収集し、行政への報告などが求められます。しかし自社内でのノウハウがなく、いざ制度に合わせて様々な取り組みを行おうとしても、独自の説明資料が作成できない事や、現場の理解が得られず苦労されていることも多いそうで、口コミで参加される方が増えてきています。
この会の良いところは、有益な情報が集まる場にも関わらず、持ち回り手弁当の研究会なので、毎回幹事をしていただく会場のホテルを利用させていただくための費用しかかからないこと。初参加者は赤裸々に語られる現場の苦労話や、ホテル内部向け教育資料の完成度の高さに、驚かれていました。
京王プラザホテル 井部修さんをはじめ、諸先輩方は、このオープンな雰囲気が大事なのだと言います。厨房の事故は、隠しごとや、現場の人間関係の不協和音が事故の原因になることが多く、それではホテルの安心安全は守られません。アニメ「アンパンマン」をサポートするジャムおじさんとバタ子さんみたいに、笑顔で明るく、そしてバイキンマンが悪事をしないように、衛生管理ルールを確実に守らせる環境を整えるのがお仕事です。
どのホテルでも必要とされる情報を業界全体で整理し、具体的な解決方法を披露する。これが業界全体の質の向上につながります。おかげで、研究会メンバーホテルは、食の事故が激減していると感じています。
・食品事故が起こるとき
食品偽装、ノロウィルス、食中毒、HACCPの制度化、アレルギーやビーガン対応、SDGsなど、ホテルが対応を求められる内容は多岐にわたるようになりました。国内最大規模のホテルブランド、プリンスホテルは500個の厨房があるそうで、日々全国を回って教育、指導を行なっている衛生管理マネージャーの小林さんからは、4つの管理視点があると教えて頂きました。「クオリティ管理、コスト収支管理、労務管理、衛生管理」この4つのバランスが崩れると事故が起こるのだそうです。大企業ではどうしても縦割りで考えてしまいますが、管理視点の歪みが事故の原因になります。コストが合わないのであれば、メニューを見直す。人が足りないなら、機器で自動化したり、アウトソーシングをさせるなど、目的を達成させるために、横串を指し、改善提案を言いやすい組織であることが、最大の安心・安全策なのかもしれません。
・HACCP認証は必要?どのレベルの衛生管理が必要?
都内の宴会宿泊施設が、今年FSSC22000取得に向けて動いているそうです。一方で、有名ホテルでも都認証HACCPすら取得することは考えていないと話す方もいました。HACCPは認証をすれば食中毒が防げるという話ではありませんが、海外エージェントから求められて認証を取得するホテルがある一方で、日本人や個人客をターゲットとしているホテルでは、そこまで必要はないという温度差を感じます。手洗い、温度管理、作業記録など基本的な衛生管理方法を従業員全員が徹底するだけでも十分効果がありますので、どんな厨房でも、できる範囲で教育と実習を徹底してください。
・パークハイアットの料理とおもてなし
今回会場のパークハイアット東京のおもてなしは、上質で落ち着きがありました。まず驚いたのは会議中のハーブティ。ホテルのサーヴィスさんは、私が選んだケースから茶葉をスプーンで取り出し、金色のポットから透明なガラス容器にお湯を注いでくれました。もう、会議だという事を忘れそうなくらい幸せな時間(笑)ちなみにコーヒーはネスプレッソですが、パークハイアットのオリジナルBOXです。 研究会の後のお楽しみ、宴会のお料理はどれもシェフの手作りだそうで、フードロス低減の目的もありスタート30分間は食べるのに専念。どれも立食パーティとは思えないクオリティで、ついつい食べ過ぎてしまいました。副総料理長の米田さんにも久しぶりにお会いすることができました。新宿駅から距離がありますが、25年以上変わらず最高のおもてなしでお客様を迎えている安心感は、人に薦めたくなるホテルです。高級ホテルではありますが、お話を聞いていると食材の原価率がとても高く、グルメさんにとってはお得なホテルとも言えるかもしれません。