先日発表された「第50回食品産業技術功労賞」のマーケテイング部門でラムバサダープロジェクトが受賞しました。担当しているM L A三橋さんからのご報告「思いがけぬ名誉で関係者全員驚くとともに、第三者機関より認められたことを大変うれしく思っています。
海外の団体・企業が受賞されるケースは珍しいそうですが、今回、『ラムバサダープロジェクト』が受賞されたのは、オーストラリア産はもちろん原産国を問わず日本で羊肉需要のすそ野を広げる、という想いが受賞の決め手になったそうです。」
ラムバサダープロジェクトがなぜ成功し、表彰されたのか?
ラムバサダーメンバーとして、またフードビジネスのプロモーション経験から、私が感じていることをお伝えしたいと思います。
ラムバサダーはオーストラリア食肉生産者の団体が支払っているマーケティング費用から活動費が出ています。つまり、訴求したいのはオーストラリア産ラム肉なのです。しかし、ラムバサダーの活動では、産地を積極的にアピールしません。
つまり「原産国を問わず、需要の裾野を広げる」活動をしているのです。
今回の、食品産業技術功労賞で受賞した理由もこの点です。
ラムバサダープロモーションがスタートした6年前、ラム肉は日本人が200g/年しか食べていませんでした。一方、オーストラリア人は9kg/年も食べていたのです。つまり、日常的にラム肉を食べる食文化が根付いていないということを意味していました。中国やアジア各国ではラム肉はとても人気で、火鍋やケバブ、ラムチョップなど、日常の外食メニューとして食べられていましたが日本人は「ラム肉は臭い」という強い抵抗感がありました。そこで、「ラム肉は美味しい」に変えれば、自然と需要は伸びて、ラム肉の輸入量が最も多いオーストラリア産の需要が増えるだろうと考えたのです。
実は日本産のラム肉はメディアで取り上げられているのですが、とても貴重です。実際に飲食店が手に入れようと思っても、新規顧客は数年待ち。そうなると、手ごろな価格で手に入るオーストラリア産、もしくはニュージーランド産になるのです。スーパーマーケットでは、ニュージーランド産が多く出回っていますが、それはラム肉のサイズが小さくて、安い価格になるからです。オーストラリア産は価格が高い外食を主なターゲットとして販売しており、ここも差別化のポイントです。
また、ラムバサダーメンバーの店「羊サンライズ」では、産地の違いを食べ比べすることもできます。ラム肉は地域によって味が異なるので、この食べ比べがとても面白くて、羊飼いの腕、その地域で好まれる味を感じることができ、食を通じて、北海道やオーストラリア、イギリス、フランスなど世界各地を旅している気分になれます。
野菜でも、肉でも、その地域で育ったものには、その地域の味がするのです。食文化というのは、難しいことではなく、同じ食材・同じ料理でも、食べる場所、産地が変わると味が変わる!ということを感じるところが面白いのです。
2020年の下期、私はいくつかの県産農産物について、プロモーションや販促活動の支援をさせて頂きました。その中で、多くの地方自治体様や、広告代理店、販売店などの関係者とコミュニケーションをさせて頂きましたが、時々、彼らが間違ったマーケティング方法をしていて残念に思うことがありました。
それは、自分たちが推したい地域産のブランドだけを強く訴求する手法です。
つまり、○○産をP Rしたいから、△△産の事は書かないで欲しいとか、相手のマイナス面を見つけて、自分たちの方が優位だとか、そんなことを言われると一気に興醒め。ああ、だから■■はあまり売れないのよね。。。と、ひとり心の中で叫んでしまうことも。
消費者は国内外、様々な地域の野菜や肉を日々食べています。
そして、その食材から産地へ想いを馳せ、口の中から感じる景色を心のなかで眺めて、食で旅する時代です。
注目されるコツは、食べて欲しい「食材」業界を代表するつもりで、プロモーションすることです。そして地域の魅力と合わせて訴求することです。そうすれば、メディアも中立と判断し、紹介しやすくなりますし、美味しい情景が目に浮かびやすくなるので、メディアも掲載しやすくなり、結果として裾野が広がってきます。
また、インターネットを検索すれば、誰でも簡単に比較できる時代です。他社製品を含めて紹介することで情報量が多くなり、リンクも増えます。有益な情報は多ければ多いほど、検索エンジン上位になるのです。
自分だけ目立つように、他地域産は排除したい!というマーケティングではなく、ライバルも含めて、みんな仲間で一緒に裾野を広げよう。という意識や手法がファンを増やします。口コミは、時々勘違いや思い込みなど、作り手としては気になることが色々ありますが、シェア・拡散して「食べたーい!」という共感の気持ちを連鎖させるのが、何より近道です。
ラムバサダープロジェクトは、羊肉の産地や所属を問わず、多くの羊肉関係者を巻き込み、コツコツとコンテンツを増やして、努力した結果、成功し、「今夜羊肉食べに行かない?」誘うと喜ばれるくらいファンの裾野が広がりました。
ラムバサダープロジェクトのマーケティング手法、さすが農業大国オーストラリアで学ぶところが多いです。ご参考になれば幸いです。
ラムバサダー公式ページ