現在、多くの農業系ITビジネスが人気です。特に生産者が消費者に直接販売できる仕組み「産直ECサイト」を活用したいと考えている生産者、消費者がともに増加。しかし、生産者側から時々聞こえてくるのは、この仕組みを使っても売れないという声が増えています。
手軽に始められると書かれていますが、実は自分でお店を構えて売るくらいの気持ちと事前準備が必要で、真剣に産直ECに取り組まないと、商品は売れません。また、売れるようにするためには、マーケティングの知識も必要です。
今年も複数の生産者さんの販売促進、マーケティングをご支援をさせていただきながら、ノウハウを貯めることができたので、皆さんのお役に立てそうな産直ECの販売支援コンサル実例をご紹介します。
①自分に合ったECを見つける
生産者が消費者の自宅へ商品を直送することを特徴とする生産者特化型のECサイトを「産直EC」呼ばれていて、首都圏では下記のサイトの利用者が多くいます。
一番古いのは「食べる通信」から誕生した「ポケットマルシェ」です。コアユーザーが「食べる通信」の読者なので、生産者応援という仕組みを理解して参加している人が多かったのですが、最近は新規ユーザーが増えています。テレビなどで社長が良く登場しているのは「食べチョク」。そして、都内生産者であれば「クックパッドマート」もオススメです。マンション住民は送料無料で産地から直送され、マンション内や駅構内に設置されたコインロッカーのような箱から自分の商品をスマホで受け取るため、人気が急上昇しています。八王子の生産者は毎日この方法で出荷して好評です。
クロネコヤマト「らくうるカート」は果樹など、既にエンドユーザー向けの直販をしている生産者が産直ECに参入したいと思ったときに便利でコストも安く、オススメです。
ポケットマルシェ
食べチョク
生鮮食品EC「クックパッドマート」
クロネコヤマト「らくうるカート」
https://www.yamatofinancial.jp/cart/
②売れる商品は何か?マーケティング調査の気持ちで使ってみる。
生産者が産直ECを始めるとき、JAに卸したり、道の駅で売る場合と消費者が異なるため、売れる商品傾向や、梱包の方法、価格設定に悩むかもしれません。安い方が売れるだろうと思われるかもしれませんが、買う側はECサイトで購入することに慣れている富裕層が多く、年代は20代から70代まで様々です。ポケットマルシェや食べチョクは一般的に送料が1000円程度、消費者負担としてかかるので、近所のスーパーでは購入できないようなブランド野菜や、評判の良い詰め合わせセットなど、3000円以上の商品でないと、わざわざ産直ECで購入したいとは思いません。一方、クックパッドマートは数百円でも送料無料を実現しているので、都心部のマンションに住む主婦層や単身者に好評です。どのサイトで販売するか?それによって、売れる商品が異なることをよく調べてからスタートしましょう。
最初は売れるまで1ヶ月程度、時間がかかるかもしれませんが、さまざまな価格の商品を用意して、マーケティング調査のつもりで商品をサイトに掲載しましょう。そのうち、ポツポツと売れるようになるので、いつ、どんな商品が誰に売れたのかを確認し、同じ商品をタイミングを逃さずに積極的に提案販売していきましょう。
③手伝ってくれるパートナー(家族・従業員)を見つける
スマホで簡単に返事ができるのですが、手袋を付けて農作業をしながら、エンドユーザーからの回答に答えるのは、とても大変なことです。日中、手が空いている時間でエンドユーザーからのお問い合わせに答えられる家族や従業員を見つけて、手伝ってもらいましょう。回答はいくつかパターンがあるので、あらかじめテンプレートで用意しておけば、クリックするだけの作業になるので、信頼できる身近な方にお手伝いを依頼することをおすすめしています。
④写真やテキストにはこだわる
自分と同じ産品を売っていて、ランキング上位にいる方はどんな人なのか、よく観察しましょう。日本全国、さまざまな生産者と直接お話をしてきましたが、自分の強み、弱みを客観的に把握している方は少なく、見せ方の工夫が足りないと感じることが多くありました。消費者の目線で、もう一度自分が作っている産品をより良く見せる方法を検討してください。写真や商品紹介文が他の商品と比べて見劣りするようでは、数百点ある商品の中で埋もれてしまいます。
昨年に引き続き、ファーム田中屋(北海道新篠津村)の生蕎麦の販促活動を支援させていただいています。昨年は送料無料キャンペーンのおかげもあり、ポケットマルシェで週間ランキング1位を獲得。しかし1月の送料無料キャンペーン終了後は売れ行きが伸び悩んでいました。
今年は、新蕎麦のシーズンに合わせて、プロモーションに力を入れることを生産者と相談しました。送料がかかっても買いたいと思える商品にブラッシュアップするため、お蕎麦の美味しそうな写真が必要と判断し、盛り付けデザイナーの飯野登紀子さんにご協力をいただきました。
さらに、立教大学のインターン生にInstagramの投稿をお願いしました。
https://www.instagram.com/farmtanakaya/
そして今年10月、ファーム田中屋「生蕎麦」はポケットマルシェ編集部の特集ページで紹介されたこともあり、週間ランキングで2位。1ヶ月で500袋(1000食)以上を販売することができました。
その後も、毎日数件のご注文をいただいています。また、購入された方から、「ごちそうさま投稿」でコメントをいただくので、それを見た消費者から、購入に繋がっています。