農林水産省では、オーガニックビレッジを2025年までに100市町村、2030年までに200市町村創出することを目標に、全国各地での産地づくりを推進しています。
当初は、市町村がオーガニックビレッジ宣言するのは少ないと考えられていましたが、令和4年度は55市町村、さらに令和5年は92市町村に拡大。2025年の目標100市町村は余裕で達成できそうな勢いです。
オーガニックビレッジとは、
「みどりの食料システム戦略」を踏まえ、有機農業に地域ぐるみで取り組む産地のことです。
農水省が「オーガニックビレッジ」の創出に取り組む市町村の支援に取り組んでいて、昨年この事業をお手伝いさせていただき、展示会や生産者ツアーを行いました。
オーガニックビレッジとは、有機農業の生産から消費まで一貫し、農業者のみならず事業者や地域内外の住民を巻き込んだ地域ぐるみの取組を進める市町村のことをいい、農林水産省としては、このような先進的なモデル地区を順次創出し、横展開を図っていく考えです。
行政と生産者、消費者が地域ぐるみで取り組んでいる先進的なモデル地区として挙げるなら、関東は千葉県木更津市、関西なら兵庫県豊岡市、丹波篠山市、丹波市、淡路市。九州なら、大分県佐伯市、宮崎県高鍋町です。
今回は、プーリアから大橋美奈子さんが地域おこし協力隊として移住した大分県佐伯市へ行き、大橋さんが魅了された理由を現地で体験してきました。
初日は、初日の出スポットとして人気の夫婦岩を結ぶ「大しめ縄」の張り替えを見学しました。毎年12月第 2日曜日に、地元の有志の手で張り替えられます。高校生からお年寄り、田中市長も皆一緒にしめ縄を引っ張っています。
理由 その1
佐伯市長 田中利明さんが明るく、人を動かすのが上手。
宮崎大学農学部出身で、漁業農業地域の持続可能なビジネスモデルを実践するリーダーとして素晴らしい働き方をしています。部下の市役所の方々が、新しいことへのチャレンジ精神があり、真面目で熱心なのも、市長の理解やリーダーシップがあるからと感じました。現地では、佐伯市長の田中科明さんから、直々に今回のイベントのお話やオーガニックシティ佐伯版SDGsの推進、さいき資本主義、サイクルツーリズムについてお話を伺いました。
理由 その2
佐伯市は海、山、里が揃う自然豊かな地域で、米づくりと漁業が盛んです。そして美味しい魚が獲れます。それは400年前から「佐伯の殿様、浦でもつ」と言われ、山や林業を守ることで漁業が潤うことを知っていたから。
また、毛利高政公はキリシタン大名であり、海外から有益な情報を得ていたと思われます。ヨーロッパの伝統と文化を大切にしながら、変革をしていくスタイルを学んでいて、日本でもキリシタン大名がいた弘前や丹波篠山など、美しい田園風景や、城などの建築物が美しく残っていることが多く、観光地としても独特の魅力があります。
「佐伯の殿様、浦でもつ」
江戸の時代が始まる直前の慶長6年、毛利高政公が佐伯2万石の藩主としてやってきました。佐伯藩領の漁村は、農民も少なく、田畑も荒れていたので、開墾が奨励されていましたが、高政公は山焼きをしてはいけないと、特別に制限するお触書を出しました。そのわけは、佐伯藩は浦々の漁などで支えられていたため、山焼きで樹木の影が海にうつらなくなると、いわしが海岸に寄りつかなくなり、漁が細る心配があったからです。「魚つき林」といって、漁業が大事にされていたあかしです。
理由 その3
大分県佐伯市は、令和2年3月にさいきオーガニック憲章を制定。とても早い時期から食のブランディングに取り組んでいます。
年間537万人(令和4年度)の観光客が来る温泉「別府」から約1時間の場所にあり、佐伯は食の街としてPRをしています。
誰が指導しているのか?という点が気になったのですが、山口タカさんというお名前を聞いて納得でした。私もバイブルのように読ませていただいている、「オーガニック電話帳」、服部幸應監修「食育入門」の編集者です。
有機農業、オーガニックと聞いて、農薬を減らした農産品を作れば良いのでしょうというのは誤解です。一次産業の方々と共に、地域全体で「食」産業を守り継続させ、ブランディングしていく取り組みなのです。
この街の「食」の指導者は、100年先を見据えてアクションを実行するなどレベルが高く、食育に取り組み、地域の魅力を理解しながら、街全体で推進しているのだとわかりました。有機生産者は25名から100名へ、有機給食用の米の生産は現在4ヶ月分、さらに増やせるように生産者の教育活動をしているとのことです。
そして、市内では市役所出身の柴田 真佑さんが熱心に活動されているそうです。今回はお会いできなかったので、次回はぜひ!
や組[YAGUMI]代表
食育とオーガニックを中心にひとり出版で活動する編集人。2001年「オーガニック電話帳」創刊。漫画「美味しんぼ」101巻“食の安全“をコーディネート。作中に“オーガニックの水先案内人“として登場。近著に服部幸應監修「食育入門」(や組刊)大分県佐伯市出身。
山口タカnote
柴田 真佑(しばた・しんすけ)さん
佐伯市役所退職後、地元弥生で、大分県初となるオーガニックレストランでJAS認証を取得し、「志縁や」を経営。食を楽しみながら日頃の備えを学ぶ場を目指している。
『志縁や』代表 柴田真佑
今回、佐伯市をご案内、お話を聞かせていただいた皆様です。本当にありがとうございました!
佐伯市役所
観光ブランド推進部 観光課 観光国際係
鳴海宏隆さん
佐伯市役所 農政課 有機農業推進係 総括主幹
増井光也さん
観光ブランド推進部 ブランド推進課 ブランド推進係 総括主幹
尾形繁子さん
佐伯市建設部 都市計画課 計画・区画整理係
河野功寛さん
佐伯市
https://www.city.saiki.oita.jp/
一般社団法人佐伯市観光協会 業務執行専務理事
川野義和さん
誘致チーム 藤原容子さん
地域おこし協力隊 大橋美奈子さん
・佐伯市観光ナビ
民宿旅館まるに丸
名物女将で一般社団法人佐伯市観光協会会長
橋本正恵さん
https://kamae-umigyo.com/toseiuniv/
道の駅かまえで20代の駅長さん
早川光樹さん
LINKED CITY からは
DE-SIGN 代表取締役社長 長尾成浩さん
株式会社大村湾商事
都会から地方へ、地域おこし協力隊として派遣される人たちを支える仕組みのお話が勉強になりました。
トラストパーク株式会社
カスタマーソリューション部 次長
西岡誠さん
キャンプ場で車中泊を無人で管理できる仕組みがあり、佐伯市でも提案ができそうです。
中村学園大学 浅岡柚美先生
流通科学部 教授 流通科学部長 博士(経営学)
サービスマーケティング、サービスマネジメントの専門家としてのコメントがとても勉強になりました!
佐伯市出身の田口由紀子さん、リゾートキャンプ場を経営している間世田淑子さんもご一緒していただき、ありがとうございました。
食と農と観光、そして古民家を改修して、自分たちでまちづくりをしている35歳の河野功寛さんにも会いました。
100年佐伯市が続くように、地域の方が様々な場所で、持続可能な取り組みを行なっている地域です。海、山、川、そして城下町がコンパクトに揃っているので、様々な地域で応用ができると思います。
ぜひご注目ください。