美瑛町は北海道でも有数の観光地です。都内で北海道の美しい農園や花畑のポスターが貼られていたら、半分は美瑛町の写真であることが多く、国内外から毎年200万人もの観光客が訪れます。
しかし、その90%が素通り観光で、食事や宿泊をせずに、帰られてしまうことが多いことが課題です。私たち農泊のソフト事業チームは、もし、美瑛の美しい農園の景色の中で、美瑛産の食材を使って食事ができるなら、観光客が喜んで食事をして、お酒を飲み、美瑛に泊まってくれるだろうと考え、ワインなどアルコールを飲みながら楽しめる食事会Farm Tableのトライアルを農園で開催しました。
今回、20代の料理人テウ&パティシエ・ダイキの2人が美瑛の旬食材や越冬野菜を使い、ランチコース料理を作りました。
桜舞い散る春の美瑛ペンションなつみの里は、遠くにトムラウシ岳を望む白樺並木の美しい田園風景があります。ゴールデンウィークで地域の方と、関東から旅行で来てくださった方に座って頂き、屋外で楽しむランチは、初めましての人も仲良くなる魔法の場所、一期一会の食事会になりました。
メニューは美瑛町や、周辺の地域の生産者から直接購入したり、畑での収穫をお手伝いした農産品です。生産者の想いを伝えるメニューになるように、三人で試作を重ねて考えました。
ウェルカムフード(行者ニンニクのマフィン、ふきのとうのフィナンシェ、ラム肉のコロッケハリッサソース)
北海道野菜のバーニャブレイダ
旬のアスパラガスを使ったビスマルク
美瑛豚とホタテのラビオリ
経産牛のコトレッタ
山わざびのパンナコッタ
ミニャルディーズ(美瑛産小麦のミニどら焼き、チーズケーキにハスカップジャム、サブレ)
コーヒー(美瑛せんたく豆さんの焙煎豆を使用)
今回、ファームズ千代田で、アニマルウェルフェアで育てられたジャージー牛・経産牛を使用しました。放牧で育てられているお母さん牛で、とても健康な赤身肉の牛肉です。一般的に美味しいと評価される和牛は運動させずに、屋内で数年肥育していますが、動物にとっては幸せな暮らしでは無いかもしれません。一方、ジャージー牛はお乳を出すために育てられていて、広い牧草地で自由に動き、草を食べ、毎年子牛を産み、搾乳しながら6,7年くらい生きるそうです。
日本では一般的ではありませんが、快適な環境で過ごしている乳牛が、子どもを産み育てて、最後は肉として美味しく食べる習慣が欧米にはあります。日本ではまだ馴染みのない経産牛ですが、フランス料理ではしっかりとした味わいと歯応えのある赤身肉が好まれることから、経産牛が高く評価されています。また、サスティナブルな料理を出すことを意識しているレストランで提供されることがあります。
私たちはすべての食材を作っている生産者に敬意を表し、美味しい料理になるように、日々研究を重ねていきたいと思い、今回ファームズ千代田のジャージー牛・経産牛を使用しました。
初めて食べるお客さまの反応も良く、とてもおいしかったと言って頂けて安心しました。ペンションなつみの里の白樺並木や農園の美しい雰囲気もあると思いますが、テウ&ダイキの作る料理は、生産者のことを想いながら作っているので、プラスαの愛情も加わっています。
生産者、宿泊事業者、美瑛町役場他、関係者の皆さまには大変お世話になりました。アンケートの結果に自信がつきました。改善点などのご要望をたくさん頂戴しましたので、さらにブラッシュアップをしていきたいと考えています。そして、条件が整えば、他の農村地域でも同じようにできることが分かってきましたので、私たちの取り組みをシェアしていきたいと考えています。