北海道美瑛町の広大な丘陵地に広がるファームズ千代田は、約260ヘクタール(東京ドーム約30個分)もの敷地を有し、創業から80年近い歴史のあるヨーロッパスタイルの大規模牧場です。

ここでは牛の繁殖から肥育、ジャージー牛の酪農、乳製品の加工、レストラン運営、さらには観光・酪農教育ファーム体験までを一貫して手がける、全国でも稀有なビジネスモデルを築いています。

モンゴルから美瑛へ──アバラゼデ社長の歩み
ファームズ千代田の代表取締役社長を務めるアブガンドロージン・アバラゼデ氏は、モンゴル出身の獣医学博士です。約30年前、獣医学の研究のために来日し、帯広畜産大学で博士号を取得。その後、ファームズ千代田の先代社長・高橋氏のもとで経験を積み、現在は3代目社長として牧場を牽引しています。4ヶ国語を話す秀才で、穏やかな人柄のリーダーシップのもと、牧場は「びえい農泊 DX推進協議会」の中心的活動の場にもなっています。

一貫生産とアニマルウェルフェアの実践
ファームズ千代田の最大の特徴は、和牛の繁殖から肥育までを自社で一貫して行う体制です。「びえい和牛」「千代田和牛」「びえい牛」「びえい黒牛」などのブランドを展開し、牛舎には約3000頭の牛が飼育されています。飼料には地元旭川の酒蔵「男山」の酒粕を活用し、発酵食材で臭みが少なく、甘みのある牛肉が生産されています。

また、ジャージー牛の酪農部門では、搾乳から乳製品の加工までを自社で行い、アニマルウェルフェアの認証(アニマルウェルフェア畜産協会)も取得しています。動物たちがストレスなく、自由で健康的な生活を送れるよう、放牧や飼育環境の整備に力を入れています。牧場で牛乳やヨーグルトを飲むと、牛が健康であることは私たちが口にする牛乳も健康の源になるということを実感できます。

地域とともに歩む観光・教育事業
ファームズ千代田は、地域との共生を大切にしながら観光・教育事業にも力を入れています。
「ふれあい牧場」では、ポニーやジャージー牛の仔牛、仔羊、ヤギ、ウサギ、ラマなどの動物たちと触れ合える場を提供し、年中無休で開放しています。クラフト体験や、牛乳の加工食品作りもできるので、ゴールデンウィークは多くの家族連れが一日中楽しそうに遊んでいました。

また、牧場で育てたびえい和牛やジャージー牛乳を味わえる「ファームレストラン千代田」も運営し、地元の食材を活かした料理を提供しています。
さらに、今年はキャンプ場敷地内に宿泊施設を整備し、「ファームステイ千代田」として農泊事業を始める予定です。令和5年、6年度の農林水産省「農山漁村振興交付金事業」に選定され、地域活性化のモデルケースとなるよう新たなチャレンジをしています。
持続可能な農業の未来を目指して
ファームズ千代田は、サステナビリティと循環型農業の実現にも取り組んでいます。牛の餌は、北海道内で契約している生産者から牧草を購入し、堆肥は野菜やビート生産者が堆肥として使用しています。醗酵堆肥は匂いが少なく、美瑛町で美味しい野菜ができるのは、地域内で資源を循環しているからだと実感できます。また、国内ではまだ少ないアニマルウェルフェアの推進など、持続可能な農業のモデルを築いています。また、DX(デジタルトランスフォーメーション)を活用し、効率的な牧場運営や情報発信にも力を入れています。
北海道美瑛町の大地で、未来の農業を切り拓き、積極的な人材育成にも取り組むファームズ千代田。
その挑戦は、地域とともに、持続可能な社会の実現に向けて進化し続けています。