― 地域と共に動く「びえい農泊DX推進協議会」のリアル ―
このたび、大正大学 社会共生学部 公共政策学科 首藤正治教授の元で学ぶ4年生のお二人、三ツ森克樹さんと齋藤陸斗さんからの質問にお答えしました。彼らは、2024年10月にびえい農泊 DX推進協議会が受け入れたインターン生です。
びえい農泊DX推進協議会が地域でどのように動き、どんな苦労や学びを重ねてきたのか。
表には見えにくい“現場のリアル”をお伝えできればと思います。
このインタビューが、地域づくりや観光まちづくりに関わる方々の参考になれば幸いです。

Q1. 行政と比較して、民間団体として自由にできる・柔軟に動けた施策はありますか?
びえい農泊DX推進協議会は民間の協議会として、農林水産省の交付金を活用しながら、20年間にわたる長期事業を推進しています。
行政と比べて最も大きな強みは、「スピード感と柔軟性」です。
① スピード感と意思決定の柔軟性
行政は手続きや議会承認に時間を要しますが、私たちはオンライン定例会議で即座に議論・承認・実行まで進められます。
② 地域ニーズへの即応と実証型の取組
公平性を重視する行政と異なり、協議会は個々の農家や地域特性に合わせた支援が可能です。
酪農畜産一貫牧場「ファームズ千代田」など、アニマルウェルフェアやサステナブル農業の支援も進めています。
③ 異業種・海外との連携
IT企業、大学、旅行会社など多様なパートナーと協働。
オーストラリアとの国際交流会も開催し、「美瑛では初の試み」と地域でも評価されました。
④ 継続性と自立運営
行政事業が年度単位で終わるのに対し、協議会は中長期的な視点で地域プレイヤーと共に活動できます。
⑤ 情報発信の自由度
SNSやクリエイティブな表現を用い、柔軟なブランド発信が可能です。

Q2. 民間団体として難しい・制約を感じる部分は?
民間ならではの苦労も多くあります。
- 資金調達の不安定さ — 補助金頼みでは継続性が課題。
- 社会的信用の差 — 行政と比べ認知度が低く、信頼構築に時間を要します。
- 人材不足 — 地域に人を呼び込んでも、スキル・意欲の育成には長い時間がかかります。
- 行政との調整の難しさ — 意思決定のスピード差や優先順位の違いが障壁となります。
- 地域文化の壁 — 小規模自治体特有の“昭和的な慣習”や男女観などに直面することもあります。
民間だからこそ、公平性・透明性の意識改革を行政へも働きかける必要があります。

Q3. 持続可能性を高めるために必要な改革は?
- 収益事業による自立化
農泊体験・地域産品販売など、自ら収益を生み出す仕組みづくり。 - 地域主導型制度への転換
官民が対等に意見交換できる柔軟な制度設計を。 - 人材育成と継承支援
インターンや外部人材の受入を通じた若手育成。 - 行政との役割分担明確化
行政は制度・基盤、民間は現場実践という協働体制を構築。

Q4. 実際に地域振興につながった成果は?
- 料理教室の開催 — 地元の食材・レシピを活かしたイベント開催で、住民間の交流が生まれた。
- 体験コンテンツ創出 — 通過型観光から滞在型へ。農業やクラフト体験を展開。
- 環境・食の発信 — 「みどりの食料システム戦略」に基づく取組が社会的評価を獲得し、雑誌、新聞などで紹介された。

Q5. 関係人口・観光客・地域住民の関係で難しかったことは?
一番の課題は「地域住民の意識変化」。
外部の私たちは“つなぎ手”として観光客と住民の間に入り、丁寧な対話を重ねてきました。
重点は、住民が自分の地域に誇りを持つこと。
それが持続的な地域づくりの原動力になると信じています。
Q6. 今後のビジョン
“映え”中心の観光から、サスティナブルツーリズムへ。
Z世代を中心に、地域との交流や文化体験に価値を感じる若者が増えています。
今後は、
- 住民と観光客が交わる体験型プログラム、
- 若者の地域参画と人材育成、
- 地域資源の再発見と発信、
- 持続可能な観光モデル構築
を通じて、「地域の未来を共に創る協議会」であり続けます。
Q7〜Q9. 住民との関係づくりと合意形成
現場で一緒に汗をかく「援農活動」や、体験プログラムの運営サポートを通じて信頼関係を構築。
note記事「美瑛でしたい100のこと」では、住民の声を拾い上げて地域価値を再発見しています。
農泊施設整備の際は、行政・農家・農業委員会等、関係者との合意形成に1年以上を要しました。
時間が要することを覚悟し、丁寧な説明と対話の積み重ねが、事業推進の鍵だと実感しています。
Q10. 成果の測定について
農林水産省の報告指標に加え、協議会独自の視点からも定性的・定量的に評価しています。
おわりに
民間の立場から地域を動かすというのは、容易ではありません。
しかし、そこには確かな“やりがい”と“可能性”があります。
地域に誇りを取り戻し、次世代へつなぐために——。
びえい農泊DX推進協議会は、これからも挑戦を続けます。