今回は、堀江純一郎シェフのお料理から、コロナを乗り切ろうと努力されている料理人さんの知恵とパワーを感じていただけたらと思います。
現在はイタリアンシェフとして有名なシェフですが、26年前バブル崩壊後の就職氷河期で、人生の方向性を変えざるを得なかった青年でした。「イタリア料理を学ぶなら、イタリアだろう」と日本を離れ、イタリアで研鑽。イタリア人ファミリーの懐に入って努力を重ねたことで成功を収め日本に帰国。1店目は奈良、そして現在はご自身の生まれ育った東京・世田谷「二子玉川」にお店「イ・ルンガ」を構えています。
週末の夜、半年ぶりに会う美食会メンバーの顔には、長いコロナで仕事の疲れが滲んでいました。マスク着用で入店し、手指消毒、席の間隔を空けて着席して、ようやく安堵の顔。久しぶりのスパークリングは爽やかです!
厨房の小窓からは、堀江シェフがお仕事をされている様子が見えます。フレンチよりフレンドリーなサーヴィス笹岡さんの解説は分かりやすく、場の空気感がイタリアンらしい明るさとフレンドリーな雰囲気がありました。
堀江シェフは1994年に都内の大学を卒業。バブル崩壊後、恐ろしい就職難を経験した一人でした。学校の先生になりたかったのに、願いは叶わず就職浪人、アルバイト程度の経験でイタリアへと渡ったそうです。
私も同世代として応援したい料理人さんです。
コロナの間に感じていたことなのですが、年上はバブル、年下はバブル崩壊世代なので、コロナに直面した時にアクションや考え方が大きく異なりました。
上の世代は経済的にも恵まれ、生活に困らない程度の資産があり、子育てがほぼ終了しているためか、コロナに直面した時に、しばらく休もうと考える人がいたのに対し、下の世代はこの状況でもできることは何かあるだろう?と知恵を絞り、手足を使い、動き回っている人が多くいました。どちらの選択肢が正しいと言う訳ではありませんが、世代により捉え方が違うことは、今後の日本経済に大きな影響があると感じています。
今回、堀江シェフのお料理は初めてだったのですが、以前の料理写真をWEBサイトで拝見してみるとかなり違います。外食が当たり前ではなくなった今、食べ手が求めているものが変化していることを敏感に感じ取り、最高のパフォーマンスで応えようと努力されていることが伝わってきました。
必ず食べたい秋の旬食材、そして王道の料理を、誰も真似できないようなレベルで表現されているコース料理の数々、メニュー名をみると、「あ、普通。。。」と思われるかもしれませんが、レストランで味わうと別格。心がフワッと踊るような瞬間がいくつもありました。
堀江シェフはトスカーナ州とピエモンテ州で、9年に亘り研鑽を積み、そのうち3年はシェフとして店を任されたそうです。日本人で初めて、現地のイタリアンレストランでミシュランの一つ星を取った実力の持ち主です。
トスカーナ州とは、芸術の都「フィレンツェ」のある州です。食材に目を向けると、オリーブ畑やブドウ園、そして海に面しているので魚介類があります。食材はそのままで美味しいので、あまり手を加えません。8月から9月にかけて食べるイタリア食材といえば「ポルチーニ茸」です。日本人の「松茸」と同じように香り豊かで、秋がきた喜びを味わえる、誰もが興奮してしまう旬食材。トスカーナ州では、ポルチーニ祭りも行われているそうです。
一方、ピエモンテ州とは、ミラノの西側、イタリア共和国北西部に位置し、北はスイス、西はフランスと接しています。州都はイタリア第四の都市であるトリノ。スローフード運動発症の地として知られています。
ピエモンテ料理はサヴォイア家がトリノに首都を構えた際に、持ち込んだフランス宮廷料理がベースと言われ、一般的イタリア料理とは、異なり、バターやラードを使い、複雑なレシピのソースをかけるのが特徴です。
堀江シェフのイタリアンにフレンチを感じたのは、ピエモンテ料理を学ばれているからかもしれません。食材の美味しさを最大限に引き出しつつ、最新のトレンドを意識して、香り豊かなソースをかける技はお見事でした。
そして、コロナ騒動の長期化を視野に入れ、テイクアウト料理で大人気だったという「カレー」がシメに登場。色鮮やかな肉とソースが絶妙で、高級食材なのか?ハクビシンを使っています。しかし美味しいのです。お茶目な笑顔と金髪が素敵な堀江シェフ、YouTube動画やビストロ営業、テイクアウトなど、レストランの幅を広げようとしている意気込みを感じる一皿でした。
店名:Ristorante i-lunga
住所:〒158-0094 東京都世田谷区玉川3-13-7 柳小路南角1F
LUNCH 11:30-14:30 (13:30 L.I.)
DINNER 18:00-22:00 (19:30 L.I.)
※完全予約制 WEBサイトからお申し込みください。
この後は、コロナによる消費者ニーズの変化を受け止め、半年ぶりに集う美食仲間との会食にふさわしい、2020年秋のフルコースを写真付きで紹介します。
・魚介のサラダ カッチェッコ風
ポルチーニ茸のソテー スクランブルエッグ チーズソース
Primi Piatti(第一プリモピアット)タリアテッレ 牛・自家製サルシッチャのラグーソース
赤ワイン
Secondo Piatto(セコンドピアット)西豪黒牛バラのロースト
Per Chiudere(シメ)本州鹿のカレー
Pre Dolce(甘いデザート)はリコッタチーズのムースでバースデーのメッセージ付きでした。嬉しいです!ありがとうございます。
カフェ 又は 紅茶 小菓子