東京で生まれ育った私には、かつて滋賀県との縁は一切ありませんでした。
しかし、有機農業を軸とした仕事をお受けしたことをきっかけに、私は琵琶湖をぐるりと五周し、ほぼ毎月のように滋賀を訪れるようになります。春・夏・秋・冬――通うたびに出会うのは、驚くほど美しい農村の風景と、滋賀県庁の皆さん、生産者の方々の真摯なまなざしでした。
関西の中では「地味」と言われがちな滋賀県。
けれど、北海道から九州まで数多くの産地を見てきた私にとって、ここほど“集落営農”が地域ぐるみで守られ、若い生産者が希望を持ち、行政と地域がまるで一本のチームのように動いている場所は他にありません。
何百年も農を続けてきた土地には、確かな理由があります。
琵琶湖があるから渇水がない。
山と川があるから伏流水が豊かで、美味しい水がぐるりと巡る。
酒蔵が多いのも納得で、しかも山系によって味わいが変わるという奥深さもある。
そして、滋賀の暮らしには“自然体の強さ”がある。
副業としての農業ではなく、週末は当たり前のように畑を手伝い、家族や集落の営みを支えている。
美味しくて美しい伝統野菜や湖魚がたくさんあるのに、県内では意外と知られていない――そんなギャップすら、滋賀の魅力のひとつです。
都会から来た“よそ者”の私だからこそ見えた光景があります。
出会った人、聞いた言葉、感じたこと。
それらを丁寧に綴っていきたいと思います。
全国の自治体や生産者の皆さんへ伝えたいことがあります。
――お手本は、ここにあります。
人口が大きく減らない理由も、訪れればすぐに分かります。
滋賀県の皆さんは初対面では口数が少なく、優しくて、一生懸命な人たちです。
美味しいものは、ただ出来上がるのではなく、栽培管理や清掃、人材育成にひたむきに手をかける人がいるから生まれる。
滋賀は、その「当たり前」を当たり前に続けている、稀有で魅力的な地域です。
観光面では、マリンスポーツが楽しめる琵琶湖があり、美味しい食材が揃い、湖岸を散歩したり、スキーもできます。紫式部の文化があり、織田信長のロマン、比叡山や神社なども多数あります。
京都のような派手さはありませんが、落ち着いて日本らしさ感じられる観光をするなら、滋賀はインバウンドにもおすすめです。
約20名の飲食関係者を滋賀県へお連れしました。滋賀県メニューフェアや、農産物の販売が首都圏で始まっています。ご興味のある方は、ご連絡くださいね。滋賀県庁からご推薦いただいた素晴らしい生産者をご紹介しています。
そして、今後は滋賀県の生産者の営みをご紹介しながら、首都圏の皆さまにお召し上がりいただく機会を作っています。
